のしのマナーと豆知識
基礎知識

① 熨斗(のし)
祝儀袋やお祝い事ののし紙の右上につけられています。不祝儀の際には付けません。また、もともと生ものである鮑を付けることで「気持ちを込めた贈り物」ということを示したものなので、贈り物が生もの(海産物や肉)の場合には付けないのが普通です。
② 水引き
進物に付ける飾り紐です。色や本数、結び方に意味があり、用途によって使い分けます。
③ 表書き
贈り物の趣旨を伝えるために、上段に贈り物の内容を伝える表書きを書き、下段には、表書きよりも小さい字で、贈り主の名前を書きます。一般的なお祝いでは、氏名ではなく苗字のみを記載します。(同姓同名の人がいたり、苗字だけでは相手に伝わりにくい場合はフルネームで記載します)
用途別ののし
季節のご挨拶
● お中元・お歳暮
お中元・お歳暮は日頃の感謝を込めてお世話になっている人へお礼と、今後の末永いおつきあいをお願いするという気持ちを込めて贈り物をする習慣です。お中元は関東では7月1〜7月15日、関西では7月中旬〜8月15日までに、お歳暮は12月初旬〜12月25日までに届くように贈るのが一般的です。基本的には遅れないように贈りますが、お中元は時期を過ぎてしまった場合は立秋までなら「暑中見舞い」、立秋以降は「残暑見舞い」として贈りましょう。
また、お中元だけを贈ってお歳暮を贈らないのは失礼にあたります。もしどちらか一方を贈る場合は、一年の締めくくりとして重用視されるお歳暮にしましょう。
お中元・お歳暮へのお返しは基本的には必要ありません。品物が届き次第、贈り主へ連絡を入れ、お礼を述べましょう。さらに礼儀を期するなら、お礼状を贈るとよいでしょう。日頃お世話になっているお礼の言葉とともに、贈られた品物への感謝を示すと喜ばれます。

【 豆知識 】 贈る相手や自分が忌中・喪中のときは
お中元・お歳暮は慶事にはあたらないので、贈っても失礼ではありません。ただし、この際には水引きのない白無地の奉書紙を使用します。
また、忌明けしていない(亡くなってから49日以内の)場合は贈る時期をずらして贈ります。お中元なら「暑中見舞い」「残暑見舞い」、お歳暮なら松の内を避けて1月7日を過ぎてから「寒中見舞い」を贈ります。
お祝いごと
● 結婚祝い
結婚する二人を祝福する結婚祝いは、挙式までに、もしくは挙式当日に贈るのが一般的です。表書きは「寿」「祝御結婚」などです。水引きは結ぶとほどけない「結び切り」を選びます。

● 結婚祝いのお返し
結婚祝いをいただいた方への新郎新婦からのお返しは、結婚式に参加された方へは「引出物」、参加されない方へは「内祝」となります。内祝は、訪問して直接手渡しするのが正式ですが、最近では宅配も多くなっています。

● 出産祝い
出産祝は子供を出産した方への贈り物です。妊娠中には贈らず、出産後のお宮参りまでに贈りましょう。表書きは「祝御出産」「出産祝」「祝御誕生」などです。水引きは繰り返してもよい祝いごとに用いられる「蝶結び」を選びます。

● 出産祝いのお返し
出産祝いへのお返しは「内祝」「出産内祝」とします。お宮参り前後にお返しするのが一般的です。

【 豆知識 】 名前の書き方
結婚や出産のお祝いでは、一般的な贈り物のときに用いられる「贈る側の姓」を表書きとしない場合があります。結婚内祝・引出物は、新郎新婦二人からのお返しなので、両家の姓や新郎新婦の名前を連名で書くのが一般的です。また、出産内祝では産まれた子供の名前をお披露目する意味もこめて、子供の名前が表書きになります。読みづらい名前のときは、ふりがなをふると親切です。
● 長寿・結婚記念日
長寿のお祝いは、還暦や喜寿などの祝い歳にて行います。還暦は満60歳に、喜寿は満77歳に祝います(本来なら数え年77歳ですが、現代では満77歳に祝うのが一般的です)。表書きは「寿」「祝還暦」「御祝」などです。
結婚記念日は25周年を記念した「銀婚式」や50周年を記念した「金婚式」などがあります。夫婦でお互いに贈り物をします。表書きは「祝結婚記念日」「祝銀婚式」「祝」などです。
長寿・結婚記念日ともに水引きは繰り返してもよい祝いごとに用いられる「蝶結び」を選びます。

● 長寿祝いのお返し
長寿祝いのお返しは、「内祝」「○○内祝」とします(○○の中には祝い歳が入ります)。

暮らしの贈り物
● 家族への感謝
母の日(5月の第2日曜日)、父の日(6月の第3日曜日)、敬老の日(9月の第3月曜日)は、日頃の感謝を家族に伝える機会です。贈り物にメッセージや手紙など添えると、より気持ちを伝えられるでしょう。カジュアルのしの表書きを一言メッセージにするのもおすすめです。

● 知人の晴れの舞台
展覧会・個展・発表会などに呼ばれた際は、お祝いの品を渡すと喜ばれます。有料のチケットをもらった場合は最低でもチケット代分の品物を贈りましょう。お祝いの品は本人に直接渡さず楽屋へ持っていき、お金や花束を渡す場合は本人に直接手渡します。
基本的に、お返しは必要ありません。お祝いを受け取ったら、当日にきちんとお礼を述べるように心がけましょう。また、後日手紙でお礼の気持ちを伝えましょう。

● 病気見舞い
病気や怪我で入院している相手を見舞うときは、注意が必要です。事前に本人や家族に連絡した上で訪問しましょう。また、入院している人の都合や好みを考えて、入院生活が少しでも快適になるものを贈りましょう。ただし、食べ物は病状によっては食べられないものも多いので、避けた方が無難です。また、タオルや肌着などの実用品は「寝付く」を連想させるためタブーです。

● 快気祝い
病気見舞いのお返しは「快気祝い」です。退院後に、見舞いに来てくれた方へのお礼と、回復の報告を兼ねて贈ります。「病気や怪我を後に残さないように」という願いを込めて、後に残らない消耗品や食べ物などが最適です。

● 陣中見舞い
スポーツの合宿期間中や、試験勉強中、稽古中などに見舞います。勝利や成功を祈って、みんなで食べられるもの・飲めるものを贈ります。先方がグループの場合、人数にも注意しましょう。

【 豆知識 】 「寸志」と「粗品」
暮らしの贈り物に対するお返しとして、表書きを「寸志」や「粗品」などとする場合があります。目下の方へは「寸志」目上の方へは「粗品」としますので、使い分けに気をつけましょう。
また、共通して使用できる表書きは「御礼」「謝礼」などです。
おくやみごと
● 仏式
通夜・葬儀・告別式、その後の法要に参列する際にお供え物として故人に品物を贈る場合があります。表書きは「御供」「御供物」などです。水引きは二度あってはいけないことに用いられる「結び切り」で、黒白もしくは双銀のもの選びます。
お返しは、通夜・葬儀・告別式・法要の参列者にお礼として、また忌明けに香典返しとしてお返しを贈ります。
※地域や宗派によって異なるため、周囲の方に事前に確認しておきましょう。

● 神式
通夜・葬儀・告別式、その後の霊祭に参列する際にお供え物として品物を贈る場合があります。表書きは「御供」「奉献」などです。水引きは二度あってはいけないことに用いられる「結び切り」を選びます。蓮が描かれているものは仏式のため使用できません。
お返しは、通夜・葬儀・告別式・霊祭の参列者にお礼として、また忌明けに香典返しとしてお返しを贈ります。
※地域や宗派によって異なるため、周囲の方に事前に確認しておきましょう。

● おくやみごとのお返し
仏式の弔事では香典のお返しに「香典返し」をしますが、現在は格式ばらないよう「志」などが一般的です。参列者へのお返しは「志」「粗供養」などです。
神式の場合、玉串料のお返しは「志」「偲び草」などです。参列者へのお返しは「偲び草」「志」などです。
※お返しのしきたりも地域や宗派によって異なるため、周囲の方に事前に確認しておきましょう。
